根本的に仕事に対する根本思想は真逆である
炎上覚悟で「SEの素養 ⊃ 経理に求められる能力」と言って良いのでしょうか。
もちろん一言で経理と言っても、大企業から中小企業までピンキリで求められるレベルやスキルは大きく異なります。
しかし本サイトで主張する「地方で経理をやろう」の範疇からすれば、筆者の偏見および経理経験の浅さを差し引いても、その包含関係が成り立ちそうなシーンは多いと思います。
しかし経理をなめてはいけません。
明らかにSEは持ち合わせない特殊能力が彼らにはあります。
それはそもそもの業務内容から生まれる思想の違いに端を発します。
秘技・トライアルアンドエラー
プログラマーについていえば、彼らは常に「楽をすること」を考えています。
いかに効率的なコードが書けるかが、能力の優劣をあらわすといって過言ではありません。
しかし、事前に完璧なロジックを構築して一発で組み上げられるようなスーパーな人は一握りでしょう。
そんな例外を除けばほとんどの人が持っているのは、「とりあえず試してみる」精神です。
大昔のように、プログラムのコンパイルに数日かかったような時代は別として、コードを組んだらとりあえず走らせてみる。
プログラムとは、言ってしまえば想定されるインプットから必要なアウトプットを引き出すための仕組みです。
おかしな値が出たら、デバッグして論理の整合性を再確認する。。
もちろんできるならば正確に取り掛かるべきにきまっています。しかしいくら自分の頭の中では完璧な理論を構築しても、思わぬところでガタッと崩れてしまうのもシステムの世界。だからこそ、ソフトウェアには膨大なテストケースがあります。
いわゆるホワイトボックステストと言われる、プログラム上のミスを検出するテストもありますが、顧客の要求仕様を満たしているかどうかをチェックするテストケースを通ることができれば、中身がどう動いているかはあまり問題にされないこともしばしばあります(これも本来は好ましくないですが、単体テスト・結合テストに十分時間が避けない現実もあります)。
つまり「一発でバグゼロ目指そう」などというのはナンセンスなのです。。
その代わり「開発初期にバグが出るのはしょうがいない。しかしそれをきちんと管理・対策し、◯月◯日までにバグ発生密度を◯以内に抑えよう」といった目標となるのです。
つまり作業効率という点で見た場合、地道なトライアルアンドエラーこそ、最良の方法である事が少なくありません。
なお、それを繰り返すことで、次からは同様のエラーが減らせます。
一方、経理の仕事は、エラーがゼロであることが求められます。
いや、経理とて、誤りを検出して回復する機会や手段はあります。
総勘定元帳の期間集計などにより、一定間隔でのチェックによっておかしな仕分けがあぶり出されることがあります。
そうであれば、SE的な感覚からすれば「あとで発見できるならそのときで良いじゃない」てなものです。
しかし経理の成果物は「全てストをパスしたのでOK」いったチェックができる類のものではありません。
正解があってないようなものもあるし、法務省の通達を知らないとわからないこともある。年度や企業規模で判断が変わることもある。むしろどこかで誤りが発見できれば「偶然の幸い」なのです。
へたしたら確定申告書の数字まで間違ったままとなり、税務調査で誤りに気付くなんて悲劇につながりかねません。
そのため経理の連中は、とにかく毎日のチェックに時間を割く。
もちろん、担当者一人だけのチェックにとどまらず、2人、3人のチェックは当たりまえ。
そこで科目を間違ってたとか、数字の入力ミスなどあったためしには、「こんなつまらんミスをしやがって」的な痛い視線を感じること請け合いです。
チェックによってミスが確実にあぶり出される仕組みがあるなら良いのですが、チェックの仕方も熟年の技に近い。
全ての項目を全部見ていたら非効率この上ないし、そんなことをしていたらむしろ頭がぼーっとしてきて全てが正しく見えてミスを発見できる気がしません。
ミスを気づくのが上手い人がいるということは、きっと効果的なチェックポイントがあるはずなのですが、「過去に間違いが多かったところ」とか「ありがちなところ」的に秘伝のタレ化していて一朝一夕では務まらないのです。
だいたいが、自分のミスというものは、同じ角度で見ている限りは何回チェックしても気づけないのです。
チェックポイント表を作ったとしても、それが正しいという頭で入力したものだからチェックも◯になってしまう。
プログラムのテストケースさながらに、正常なInputに対し異常なOutputが発生したならば間違っているから、中身を見直せばよい、という仕組みがあるわけでもありません。
「角度を変えてチェックする」という切り口があれば、それを活用すべきですが、何かの集計とか計算なんてものは、やり方もチェックの仕方も一つしかなかったりします。
そんな過酷な環境なのに、慣れなのかそもそも人間として優秀なのか、経理の人はミスが少ない。
シックスセンスがあるとしか思えない。
こればっかりは、SEのゆるさにどっぷり浸かっていた筆者(そのつもりないですが)にとっては、果たしてそのような超能力者になれるかというと、自信はまったくありません。
経理仕事はSE観点からすると改善余地だらけ
さて、経理屋の特殊能力について触れたところで、SEである読者は怯んだかもしれませんが、これは「本来人間に求められる能力ではない」「できなくて当たり前」と断言します。
いや、例えば医者だとか、子供のときから100点ばかりとってきたような一部の超優秀な人でないとできないようなミスの許されない高難易度な職業はあると思います。
しかし経理の仕事の大半は、そこまで人間が時間と人数をかけてやるべき業務ではない。
淡々とした毎日の仕分けとか、振込処理・入金確認とか、それに伴う入力作業は、医者のように命を救うわけでもないし、会社にとって何か利益を生み出すものではないためです。
(数字をみて事業戦略を練るとか、そういう仕事は別ですよ)
「AIにとって変わられる職業」という記事が紙面を踊るとき、決まって経理は上位にランクインしています。
それが物語っています。つまり機械でやれる仕事、いや、やらないといけない仕事です。
言い換えれば、シックスセンスがなくてもミスなくできる仕組みを構築すれば良いのです。
そしてそれができるのは、SEから経理に転身した人くらいです。
上で、プログラムのテストケースのように誤りを検出できる性質のものでないという趣旨の発言をしたので、この主張は矛盾するように思えるかもしれません。
確かに法律の知識前提で解が得られる部分についてはそのとおりです。
しかしそうでない、人的エラーに起因する部分については、改善の余地はたくさんあると感じます。
例えば、銀行口座の入出金情報とデータ連携し振替伝票入力を自動化する、売上・仕入入力を取引先の入出庫管理情報と結びつける、など、各取引先システムでAPIがl公開されているならばそれに乗っかり、活用する。
また、過去のデータ資産を利活用し、過去の入力パターンと異なっていれば検出する。最低限、過去の入力データを再利用できるようにする。
これは一般的なパッケージ会計ソフトならばどれもできると思いますが、中小企業となるとそういう機能もないシステムを使っていたりもします。
そもそも、手書き伝票は廃止する。これも今だに残っている会社も少なくありません。廃止にはどんなデバイスが必要か?そのコストはどのくらいで運用はどう変わるかを分析する必要があります。
こういった角度からのアイディアならば、SEから経理に転身した人ならばいくらでも湧いてきます。
あえて言い切ろう。経理の方が楽だと。
経理がいかにミスなく仕事をするという特殊スキルを身につけているかについて上で書きました。
しかしあえていえば、経理の業務だけに限って言えば、SEよりもはるかに負荷は低いと言い切ります。
もっと言ってしまえばあえて社員でなくてもよい。
だから、一部の法律的な専門知識が必要な部分や、申告作業などのミスの許されない部分は税理士を使い、日々の仕分け作業はまるまる外部委託する企業も多いのです。
もちろん、顧客にどやされて深夜まで残業し終電もなくしスーパー銭湯に泊まるようなSEの醍醐味を味わうこともない。
SEがやれた人なら、経理はできます。
ただし、繰り返しますが、経理にも大企業から中小企業までピンキリで求められるレベルやスキルは大きく異なります。
しかし本サイトで主張する「地方中小企業で経理をやろう」の範疇からすれば、求められるものはSEほど多くないということです。
資格で言うのも乱暴ですが、簿記3級は商業高校の生徒でも取れるくらいのものですが、それが取れればまず経理用語や仕分け業務などの基礎知識は身につけることができます。
一方で基本情報技術者試験や応用情報技術者試験は、偏差値高めの高専の生徒でもそこそこ努力しないと取れないのではないでしょうか。
経理の熟練者にとっては腹がたつ表現であることは認識していますが、想定している読者の対象が違うし、そう断じることが世直しに繋がるかもしれないという以降の主張のお膳立てなのでどうかご了承ください。
一方で、SEであったとしても「意識高い系」ならば、そんなつまんなそうな仕事やりたくねー、そのうちAIでなくなるんでしょ?と思うかもしれません。
ならばなぜ経理への転身を勧めるのか?については、続きの記事で書きたいと思います。